まこっ鑑賞録

読みたい!見たい!と思ったものを鑑賞し、そのまんま感想述べてみるブログ

読書100冊(1)『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ著

100冊読むぞ!と決めたので、読了したら感想等ここに記していく。

 

1冊目は言わずと知れた古典の名著、SFの始祖ヴェルヌの『地底旅行』(光文社、高野優訳)。

 

この話は主人公アクセルが叔父のリーデンブロック教授に連れられ地底を冒険する体験記となっている。まずはその経緯について話そう。

 

ドイツのリーデンブロック教授は高名な地質学者だったが、それはもうめちゃくちゃな変わり者で、自分の説を絶対曲げないし、おまけにおそろしくせっかちで、早く成長させたくて植物の葉を引っ張ったりするほどだった。そんなヤバい人を叔父に持ってしまった助手のアクセルは尊敬しつつも毎日やれやれと感じていた。

ある時叔父はアイスランドのサクヌッセンムという人の本を手にする。入手困難な本を手にして踊り狂っていた叔父だが、そこからひらりと1枚の怪文書が。これは何かの暗号では?と思った叔父は、アクセルやメイドを監禁し、解読できるまで外出できま10という恐ろしいことを敢行し始めた(叔父は超頑固者なので本気でこんなことを実行する)。やめてくれよ…と思っていたアクセルだったが、なんとふとした瞬間解読出来てしまった!そしてその内容は恐ろしく、この地球は中心まで地底世界が広がっているというものだった!

「叔父の性格からして地底世界の存在を知ったらマジで出掛けてしまう現実」VS「解けないまま餓死しそうな現実」に悩みに悩んだアクセルは、遂に屈服し暗号文の内容を話してしまう。もちろん、叔父はテンションが爆上がり、即刻仕度し始め、アクセルも強制的に連れられ、地底旅行は始まったのである___

 

とまあ、かなりかいつまんだが、入口に着くまでがひじょーーーーに細かく描写されていて、地上での出来事は物語の半分を占めている。こうした部分は読み飛ばしたくなるものだが、実は物語のリアリティを引き立たせ、人物像を滲ませるという点においてはかなり効果的で、フィクションという割には信じこんでしまう作りになっている。ただの空想に終わらせないために、ヴェルヌは科学に関して当時としてはものすごい知識量を持っていたに違いない。地質、生物、進化論や巨大な爬虫類(当時フランス語に無かった「恐竜」)を徹底リサーチし、あの説は否定されるからこの説で、という論法で読者のツッコミにカウンターを入れてくるのだ。新時代だ!科学で説明しなくてはいけない!神や魔術はこの際省いてしまおう!そんな気概が感じられた。

 

地底に入ってからは鳥肌立つ展開の連続。暗い、狭い、地下に続いてた、ってだけのストーリーではなく、沈黙の世界で奇怪なものを目の当たりにしつつ、そーっと通り過ぎる、そんなスリルが楽しめる。ハリウッド映画にありがちなドカーンというアクションはほぼない。抜群な運動神経もなければ刹那の幸運もなく、地学オタクたちが知識(と叔父さんは情熱も)だけで現状を打破していくのだ。映像作品の方が見易くそちらへ逃げがちだが、思考回路をここまで詳細に書いてあると、久しぶりに小説を読むことが出来てよかったと思える。

 

総括!

まだ子供なら読め!

 

さて、私においても読書という長い旅の出発点となる。やれやれと文句をぶつぶつ吐きながらもなんだかんだ引き返さないアクセルには何か親近感が湧く。

 

踏破しましょう。